自然に寄り添い、調和する、”間”を大切にした暮らし。yu.re.rainさんの店舗兼住宅のおうちを探索!
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大きく切り取られた窓からは見渡す限り続く田園風景。季節ごと変わる風景も、朝の日差しに夕焼け空も、日々変わる様子はまさに自然の絵画そのもの。
2階リビングには素材の温もりと経年の佇まいを感じるウィンテージ家具に雄大な景観が調和し、1階は白と黒にモルタルを組み合わせた無機質な空間も。店舗兼住宅にお住まいのyuさん(@yu.re.rain)にお話をお聞きしました。
この場所を選び、そしてこの場所で暮らす理由と、yuさんが込めた家づくりへの想いが伝わってきました。
自然に寄り添う土地と建築士との出会い
yuさん
家づくりにあたり、我が家は「店舗兼住宅」といった一般的な住宅からはかけ離れたところから始まりました。この店舗の部分は実に弊害が多く、コスト面や間取りはもちろんのこと、家づくりの工程で実に多くの影響を及ぼしました。
大変だった土地探しや建築家さんとの出会い、そして現在の暮らしについてお話したいと思います。
最初に苦労したのが建築士探しでした。店舗兼住宅の施工事例が少なく、書籍や雑誌を調べて該当する方がいても県外で施工範囲外といったケースがほとんどでした。また一般的なハウスメーカーや工務店さんは当然ながら住宅に特化しており、店舗兼用が必須だった私たちの選択肢に入ることはありませんでした。
そうこうしているうちに時間だけが過ぎ、探す作業自体に疲れを感じ、諦めにも似た感情を抱きながらネットを眺めていると、あるひとりの建築士さんの言葉が目にとまりました。
「”空気感”と”温度”を大切にし、施主や立地、または店舗であれば提供される料理やそこを訪れる人々をも想像し、空間全体が平熱と言われる36.5℃になるようにデザインを組み立てていく」
まるで暗闇に一筋の光が射すようなその言葉は、優しく私の琴線に触れ、「キャンバスのように白く簡素な空間に、住まい手やそこを訪れるであろう人たちと、日々の暮らし、経年とが色付けをしていく」 そんな暮らしを連想させるものでした。
建築士の言葉に強く共感した私たちは、高鳴る気持ちを抑えながら依頼をすることになりました。
利便性と景観を兼ね備えた土地
続いて土地探し。求めたのは利便性と景観。利便性とは私たちだけでなく、将来的にここを訪れてくれる人たちも含めたもの。
私たち夫婦は旅行や遠出が好きなこともあり、今まで本当に様々な場所を訪れてきました。その中で私たち夫婦が好きな空間は、店舗や施設内だけではなく、そこを取り巻く環境含めてだと気付きました。
都市部には素晴らしい内装のお店がいくつもあります。ただそれはあくまでもお店の中だけの話。一歩外に出れば喧騒で溢れ返り、とても居心地の良い空間とは言えません。そうした場所にまた訪れたい!と思うことは少なく、私たちが幾度となく赴くのは自然に寄り添う土地でした。
しかし自分たちが好きになった場所は人里離れた遠方にあり、気軽に行ける距離ではないのがほとんど。都市部からもほど近く、自然が溢れる場所。それが今の土地を決めた最も大切な理由です。
我が家は東側こそ住宅が軒を連ねていますが、それ以外の方角は遥か遠くまで田畑が広がっており、北側には川も流れています。
川にある堰は、様々な鳥の餌場であり、また堰の段差が心地良い川音を奏でる場所でもあります。決して上流ほど綺麗な川ではありませんが、家の傍に架る橋には時折り道行く人が足を止めては川面を覗き込む姿も見受けられます。
このような環境を目の当たりにすると、日常の喧騒を離れ癒しを求めてたくさんの人たちがこの土地を訪れて欲しいと強く思うようになりました。またこれだけ自然に溢れた環境ですが、家の目の前には国道が走っておりアクセスし易い点でも思い描いたとおりの土地でした。
およそ2年近くもの間、土地探しに疲れ切っていた私たちが、利便性と景観という相反するこの条件を兼ね備えた土地に巡り合えたのは、奇跡に近かったと今でもそう思います。
遮るものがない景観と温もりある素材たち
前述しているとおり店舗兼住宅の我が家、1階の広い面積を店舗が占めるため、必然的に2階リビングに。ただそう表現すると仕方なく選択したように聞こえますが、2階リビングは理想のひとつでした。
設計当初はコストを踏まえ外壁面積の少ないキューブ型を希望していましたが、それだと住宅感が増し店舗の存在が希薄化してしまう、といった建築士さんのアドバイスを受け、多面的な形となり2階はリビングダイニング、そしてキッチンのみとなりました。
階段を上がると先ずダイニングスペースがあり、LDKの中央にはアイランドキッチン 、段差を設けた先がリビングスペースになり、もうひとつの段差を越えるとテラスへと続きます。
この段差は元々希望していたものではなかったのですが、階段を上がり、ダイニングスペースを通りリビングを抜け、そしてその先のテラスへと向かうこの心地良い段差が、外へと向かう視線を自然と上へと押し上げ、結果的に空間に奥行きをもたらす形となりました。
大きく切り取った窓から遮るもののない景色を眺めていると、ただそれだけでとても穏やかな気持ちになれます。
そして、この風景に合わせるように家具を選んでいきました。大切にしたのは温もりと素材感です。新しいものにはない古いものの経年による佇まいは何にも変えられない魅力があります。
ダイニングテーブルはデンマークの古いエクステンションテーブルで、来客時には天板を拡張させられ、日本の狭い住居にも適したデザインです。
椅子はそれぞれオーク、チーク、ビーチと材質も形も違うのですが、座面をペーパーコードで揃えることで統一感が出るようにしています。
カドヴィウス、ウェグナーのCH24、モーエンセンのJ39とどれも古いものですが、決して古臭くはなく洗練されたデザインとヴィンテージの佇まいがとても気に入ってます。
個人的に好きな眺めが西側の風景です。
窓からは遥か彼方まで続く田畑に広い空と山の稜線、壁に設置したセルジュムーユの照明と、その壁に心地良く収まるSoborg Mobler製のクリスチャン・ヴィットのキャビネット。
このキャビネットは、組継ぎされたマホガニー無垢材が美しく単調な形のアクセントとなり、また本を収納している所には棚板の嵌め跡もあり、本来は違う使われ方をしていたのではないかと想像させてくれます。
ただこうした変化も古いものを引き継ぐ楽しみのひとつであり、新しいものでは決して得ることのできない味わいだと思います。このキャビネットの形状に合わせるように、照明とスピーカーも少し角張ったものを選んでます。
照明はflameのcomte S。オークの本体とシェードから零れる光は温もりがあり、壁に美しい印影を映し出してくれます。
スピーカーはチボリオーディオ。音は伸びやかで広がりがありクラシックやジャズを聴くのに適しています。またスピーカー本体のウォールナットの材質も温もりを感じます。
我が家の家具は古いものが多いのですが、ヴィンテージ家具は理想のものに出逢えないことの方が多く、またそもそも思い描いたデザインのものがない場合も多々あります。そのような時は近いテイストのものを選ぶようにしています。
TVボードはSAC WORKSでオーダーし、ローテーブルはHIKEで購入したものです。どちらもチーク材を使用しており、北欧テイストでヴィンテージを思わせる佇まいが他の家具とも上手く調和してくれています。
また家具を選ぶ基準として、視線の抜け感を意識し目線より低いロータイプのもの、更に床面を遮らない脚付きのものを選ぶことで、限られた空間をより広く感じ取れるようにしています。
自然を感じるプライベートな空間
店舗兼住宅のため、自宅用と店舗用と2つの玄関があります。
自宅用の玄関は店舗との兼ね合いもあり目立たないよう奥まった位置にあり、玄関へと向かう通路の壁はSOLIDOを採用しました。
通路は決して広くはないですが、かえってこの狭さと無機質な壁の質感が隠れ家的な雰囲気を演出し、外出や帰宅時の楽しみのひとつになっています。
また玄関アプローチ正面にFIX窓を採用し、その奥にも同様にFIX窓を設けたことによって、視線が抜けるつくりになっています。
続いて1階には寝室と洗面・バスルームがあります。
洗面とバスルームは光と景観を取り入れることを考えガラス張りに。またプライバシーを保ちつつ景色や川音を楽しむために外との境界にインナーテラスを設けており、その分だけ洗面とバスルームは狭くなりました。
しかしタイルとガラスを組み合わせ視覚的に連なったひとつの空間にすることで実際の面積以上に広く感じられます。
造りもユニットバスではなく在来工法にするとより天井を高く設計できます。入浴時は湯船に浸かるため目線がより低くなり、天井が高いだけで開放的な気分になれます。自然を取り入れ、四季折々の風情を感じられるように、狭いながらも思い描いたイメージが形になったお気に入りの空間です。
そんなお気に入りの洗面・バスルームと隣接する形で寝室があります。
寝室は少しでも寛げる空間になるよう、お気に入りの本や音楽を楽しみつつも、照明やスツールの位置には気を使い、夫婦のどちらかが寝ていても干渉しないよう、適度な距離感を保ちながらお互いが気持ちよく過ごせるようにと意識しています。
そして寝室にも大きな窓を採用しました。天気の良い日もすぐれない日も、朝起きて自然と目に入る大空の景色は気持ちを癒してくれます。
「未完成」を楽しみながら暮らす
最後に少しだけ店舗のお話を。ここはまだ未完成で開業に向けて少しずつ手を加えていっている状態です。
白い壁に黒い枠、そして床はモルタルと全体的に無機質なトーンになっています。さらにその無機質さを助長させるように椅子やテーブルなどインダストリアルなアイテムを多く配してます。
現在はオーディオルームとして使用する時間が多いのですが、開業という先々を見据えた時に様々な年齢層の方が訪れてくれるであろうことを踏まえ、木材の温かみのあるものを増やし無機質さを中和させ今よりも柔らかい雰囲気にし、誰しもが居心地の良い空間になれるようにしていく予定です。
1階は開業に向けての設備面が整っておらず、未完成の空間でもあります。この未完成の空間が今後どのように変化していくのか、家を建てた後もこうした成長を感じられるのをとても嬉しく思います。
ひと呼吸する”間”を大切に
建築士さんのアイディアでもありますが、我が家は”間(ま)”を大切にしています。
個人的にホテルや旅館が好きで、どうしたらそのような趣のある空間になるのか、それを少しでも実現させるために多くの間を取り入れることにしました。この”間”とは、近年の住宅であれば無駄とされる通路や廊下を意味しています。スペースを有効活用するのであれば廊下ほど無意味なものはありません。
しかし空間と空間とを繋ぐ間があることでメリハリが生まれ、かえって空間自体にゆとりができるように感じます。ありふれた表現ですが、「暗く長いトンネルを抜けると広がる銀世界」このイメージに近いのではないかと思います。
玄関へと向かう通路、自宅と店舗を繋ぐ廊下、2階へと続く階段、寝室へと向かう短い廊下、全ての間の先には大きな空間が広がります。とくに寝室は唯一定宿と呼べる旅館をイメージした作りになっており、間となる廊下を抜けひと呼吸ついた先に、大きく切り取られた窓からの風景が目に入ると息を呑むほどです。
ただ通り抜けるだけの廊下ではなく、空間と空間を繋ぐ、ひと呼吸つく、そんな”間”として廊下の果たす役割は、想像している以上に大切なものだと思います。
「自然に寄り添う家」これが我が家のテーマです。前述してきましたように、自然のある景観と家(場所)と調和した自然を意味しています。
訪れる方が意識することなく自然に触れ、そして心地よさを感じ、また自然と足を運んでいただける場所、そんな思いが詰まっています。これからも自然のように四季折々変わりゆく姿、また変わらない雄大さを感じながら、この家での暮らしを楽しみたいと思います。
Instagramを眺めている時に、リビングから見える夕焼けの美しさに思わず手が止まりました。眺望の良いおうちはいくつもありますが、それ以上に強いコダワリを感じて、執筆のご相談をしました。
いただいたお話は想像以上のもので、読んでいるこちらまで心地よくなるものでした。今回は軽めにご紹介いただいた家具への想いも、機会があれば深掘りしてみたいと思わせてくれました。
そして家づくりには必ずつきまとうコストの課題。yuさんのような”間”の捉え方もあれば、その逆もしかり。ゆとりとコスト、一見相反するようですが、捉え方、考え方次第ではうまく共存できるともいます。もちろん、それには設計の腕が必要ではあります。
その設計士さんとの出会いも、この土地との出会いもyuさんが強く望んだからこそ叶ったものだなと編集しながら感じました。
家を建てる予定がなかったり、すでに建ててしまっても、自分の理想の土地はどこだろう、そんな想いを馳せながら日々暮らしていくのもなんだか楽しそうですね。
yuさん、貴重なお話ありがとうございました!
(編集:編集長)
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