「飽きない家づくり」人生3つの転機を控えた柔軟な暮らし方〜kiko__502さんのリノベーションを探索!(前編)
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真っ白な壁とコンクリートの天井。シンプルと無機質の組み合わせの中に、無垢材をつかった家具や床の温もりをより一層感じるおうち。
お風呂と洗面以外、仕切りのない部屋。広々としたワンルームには、窓からたっぷりの日差しが降り注ぎます。明るくゆったりとした空間をつくり出すまでには取捨選択があったはず。そんな背景を伺いたくてkiko__502さん(以下kikoさん)にお話を伺いました。
中古マンションの選択の軸、ライフプランの考え方も参考になります。前編後編の2部にわけてお届けしていきます。ぜひご覧ください。
好みの暮らしを実現するために
kikoさん
我が家のリノベーションについて、”住まい”に関する考え方も交えながらお話したいと思います。まずはリノベーションを選択するにあたり、「場所」と「ライフスタイル」の2つの観点について。
私は一人暮らしの頃利便性がよく緑も多い最高に住みやすいエリアで暮らしていました。当然土地も高く、駅近にはマンションが立ち並ぶほど。このエリアでの暮らしをイメージしていたので、家の購入を考え始めた際、必然的にマンションへと絞られていきました。
それから住まいを軸に考えたときに、人生には大きくわけて3つの変化があると思っています。
1.家族が団子になって暮らす
2.個々の居場所を大事にする
3.夫婦二人で老後を楽しむ
新築でもリノベでも、もちろん賃貸でもそれぞれの時期にフィットした家に住みたいと考えています。当時から現在に至るまでは1のフェーズ。少しずつこどもも大きくなれば2を考え始め、3は瀬戸内海を眺められる別荘のような家に住めたら…妄想は止まりません。
この「場所」と「ライフスタイル」の観点から我が家はマンションリノベーションを採用することに。
自分たちで設計した家に住む
リノベーションの良さはシンプルに「好みの暮らしが実現できる」ところ。しばらく遠距離結婚をしていた夫と一緒に暮らすタイミングで出た条件が「自分たちで設計した家に住みたい」だったほど。
以前の住まいも建物ごとリノベーションされたマンションで住み心地に関しては経験済み。早速リノベーションに適した中古マンションを探すことに。
続いて物件探しで大切にしたポイントは以下3点。
・窓からの眺望
・周辺の地域の環境
・マンション住民の雰囲気や管理状態
マンションの内装はいくらでも変更ができても、上記3点は自分たちの力では変えられないものです。
眺めの中でも「窓からじゅうぶんな緑や空が見えるか」は特に重視しました。また徒歩圏内に広い公園はあるか、治安は良いのか、学区はどこか、ここもとても大切な要素。
より難しいのは住民の雰囲気でしょうか。ただ中古マンションは現地を訪れると、共有部分のお手入れや住まわれている方々との挨拶など、なんとなく感じ取れる部分はあります。そういったマンション全体の状態は将来に直結します。よい状態のものは、築古で購入しても数十年住み続けられ、場合によっては買い手もつくこともあるほど。
しかしこの条件がなかなか難易度が高く、理想の物件に出会うまで時間を要しました。
エリア、駅名、予算を照らし合わせながらネットで探し続けること1年半。サイトを毎日のようにチェックし、実際に現地にも見学に行きましたが「これだ!」と感じる物件には出会えず。
仕方がないので予算を少しだけ上げてみたところ理想に近い物件を発見。予算オーバーでしたが、夫に確認しすぐに現地に向かうと待っていたのはイメージしていた通りの眺望でした。
その眺めを見た瞬間「!!!!!!!!!」と衝撃が走ったのを今でも覚えています(笑)いわゆる、一目惚れでした。購入時は築40年を超えていましたが、管理の手が行き届いており、住民の方もすれ違えば挨拶をしてくれる。全ての条件が揃った瞬間でした。
「飽きない」家づくりがスタート
私は設計事務所で建築士として働いており、夫は構造の設計事務所を主宰。夫もデザインにはかなりこだわりがありますが、私のセンスを信頼しているようで細かいところは任せてくれます。
仕事では公共施設やビルの設計をしており住宅は専門外。夫の方が住宅の建築家さんと共同経験も多く、住宅設計のポイントを要所要所で教えてもらいつつ進めていきました。
役割としては、夫は施主で私が設計士。夫が言葉やイメージ写真で要望を出す→私がスケッチや図面、CGで作成してプレゼン→夫がダメ出し・・・の繰り返し。なかなか厳しい施主さんでした(笑)
最初につくりすぎない
夫婦二人三脚で進めた設計ですが、大切にしたのは「飽きない家」。これは気軽に変化させられる意味合いを込めています。最初から作り込みすぎず、固定物を減らし、一目惚れした眺望を活かす、そんなプランに着地しました。
以前の住まいも実はリノベーション済みの物件で、60平米の1LDKが広々として快適だった経験も後押しし、部屋を作らず、壁も取り除き、収納も最小限にしたことで、広々とした空間ができあがりました。
簡単に変えられないもので固めてしまうと、生活や好みの変化に合わせて家を変えていくのが難しい。正直、10年も住めば小さな変化ってたくさんあると思います。”壁”ではなくカーテンや家具を組み合わせて場所を作り出して対応していく、そんなおうちです。
家族が団子になる時期の間取り
購入した物件は80平米の3LDK+納戸の間取りでしたが、最終的に広いワンルームにしました。先述しましたが、今は家族が団子になって暮らす時期なので、家のどこにいても気配を感じられ安心できる、そんな間取りです。
真ん中に腰壁で囲まれたスペースがあり、その周りには2重にカーテンレールを吊り下げています。カーテンをどの部分に吊るすか、どんな素材のカーテンを吊るすかでガラっと印象が変わるので飽きなくておもしろいです。
暮らし始めてからの話をすると、想定していなかったり困りごとはやはり出てくるもの。特にこどもが生まれてからは想定外のことばかり。
例えばベッドスペースのカーテン。冬になると北側のエリアは冷え込みます。夫婦二人の時は毛布をしっかり被りますし寒さは気になりませんでしたが、こどもは気がついたら布団をはねのけて寝ていたりします。それまではスケスケのレースカーテンを付けていたのですが、防寒対策として厚めのカーテンへと切り替え冷気を遮れるように”変化”させました。
「こうなったらいいなぁ」と思ったら変えられる。日常の中で我が家の設計が活かされるケースがたくさんあります。
本物の素材を使う
話を戻しまして、間取りの次はインテリアへ。まずこだわったのは素材で必ず”本物”を使うようにしました。
無垢材やモルタル、本物の素材にはメンテナンスだったり劣化だったりとデメリットはつきもの。そのデメリットを解決した「〇〇風」の機能的な製品が開発されています。我が家はあえてそれらを採用せず、メンテナンスや劣化を楽しもうと素材選びをしました。
とはいえ、決してマメではないのでなるべくお手入れの負荷がかからないものを懸命に探しました。その結果、床は無垢材ですがガシガシ水拭きできるものが見つかりました。
・無垢フローリング:toolbox/継ぎ無垢フローリング/オーク/マットウレタン塗装
不便を楽しむ
コストの話にも通じますが「不便を楽しむ」くらいの暮らしがちょうど心地よいのかなと思っています。設計当時はコスト削減を意識し、床暖房なし、断熱材を取り、エアコンは1台のみ。広さと空調を考えると少々辛いかな?と思いましたが、案外快適に暮らせています。
もちろん一戸建てで断熱材を取り払うのは避けた方がいいですが、RCでできたマンションならではかなと思います。
そして一年中どの部屋にいても快適・・・ではなく、冬は南側の日の当たる場所で、夏は北側のひんやりした部屋でくつろぐ。四季を自宅で楽しむひとつの形かもしれません。
実は入居するまで冷え性だった私が、今の家で数年暮らしているうちに体温もあがり、いつの間にか冷え性を脱却していました。人の体は厳しい環境下に身を置くとちゃんと順応するようです(笑)
さてリノベーションの選択、マンション選びから間取り、そして暮らしへの考え方をご紹介してきました。後編ではコストをより詳しく、またインテリアや内装、少ない収納についても触れていきたいと思います。
(つづく)
「変えられるものと、変えられないもの」この視点、ハッとさせられました。ごく当たり前の話かもしれませんが、立地、眺望に加え、値段、間取り、階数などなど全部一色たんに考えがちだなと。
そして、内装はいつだって変えられる、これも勇気がでますよね。最初から完璧を目指さなくても良いですし、余白を持たせる、そんな意味合いも含まれています。ただ、そのためには一定の予算感で施工しなければなりません。
その予算感はどうやって?といった視点も、kikoさんはライフステージを3つに区分けして逆算されていましたね。住宅には補修がつきもので、そういったコストではなく、どんなライフステージを送りたかといった観点でも考えられると、なんだか前向きになれそうです。
後編もkikoさんの暮らしへの考え方を軸に内装、インテリアについてご紹介していきたいと思います。
(編集:編集長)
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