【暮らしの中の家具】暮らしを豊かにする家具選び〜椅子選びの3つの法則(FILT.さん)
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日々の暮らしの中で欠かせないもの、大切な家具から雑貨、お花、珈琲なんて方もいるかと思います。
家具を買うときに、材質の種類やメンテナンス、塗装の特徴と言ったことや、お花屋さんに寄った際に、季節の花や活け方、日持ちするの?なんて、値段に差こそあれど、ちょっと知ってるだけで選択肢が広がることが沢山あると思ってます。
そう言った、ちょっと知ってると暮らしに広がりが出る、そんな「へ〜、なるほど〜、そうだったんだ!」と思ってもらえるようなコラムを「暮らしの中の◯◯」シリーズとしてお届けしていきます。
「暮らしの中の〇〇」シリーズはこちらからご覧いただけます。
椅子が作り出す理想の暮らしのある空間
はじめに自己紹介
はじめまして。
愛知県岡崎市で小さなインテリアショップFILT.(フィルト)というお店を営む反端祐樹(タンバタユウキ)と申します。
私は、家具・インテリアが大好きで、仕事としてはもちろんですが、プライベードでも海外のインテリア情報や雑誌を読み漁っています。この度ご縁がありまして、ムクリさんにてインテリアのコラムの連載を始めさせていただくこととなりました。
まずは簡単にFILT.がどんなお店かを紹介させていただきます。
お店の活動内容は大きく分けると3つになります。
・家具の販売
・オーダー家具の製作
・雑貨の販売
店で扱うものは、北欧や英国のデザイナーズチェアや、国内で手作業で作られるデザインの美しい家具、またオーダー家具の製作などをしています。そして、一番得意としているのは家具を中心とした空間のコーディネートです。
・意匠:デザイン
・温度:家具の温かさ
・調和:コーディネート
この3つを大切にした空間づくりを心掛けています。
家具はご新築やお引越しの際にご購入を検討される方が多いかと思います。しかし、初めての家具の買い物はとても難しいものです。それが洋服であれば「持っているデニムに合わせるために、このシャツを買おう」と自然とイメージがしやすいのですが、家具となると急に全体のイメージが掴みにくいと感じる方も多いと思います。
その為テーブルや椅子をそれぞれ気に入ったからとバラバラで購入し、一つ一つはとても気に入っているのに、いざ一緒の空間に配置してみると、なんだかまとまりがない空間になってしまったなんてことがよくあります。
中々簡単には買い直しができない家具は、上手に選ぶことで生活を、もっと言えば人生を豊かにできるとても大切なものだと私は考えています。
そんな大切な家具選びだからこそ、家具が大好きな私の経験とインテリアのプロとしての知識を生かし、より多くの方に暮らしを豊かにする空間づくりのヒントや情報をお伝えしていけたらと思います。
暮らしをつくる椅子
家を購入したり引っ越しなどで、心機一転家具を入れ替えての新生活。そこには家具を買うことがゴールではなく、その家具のある空間でより良い暮らしを送りたいという想いがあると思います。
理想の暮らしを実現させるために必要な一番良い椅子は何か?と聞かれることがありますが、誰にとっても一番良いというものは世界中探しても存在しません。使う人の体格や暮らし方によっても使いやすさは変わってくるので、自分の暮らしに合う椅子を選ぶことが一番大切なのです。
カフェのようにゆっくり寛げる部屋にしたい。こどもと楽しい毎日を送りたい。在宅ワークを快適にしながら暮らしを充実させたいなど、理想の暮らし方は人それぞれで、イメージする人によって異なります。
しかし信じがたいかもしれませんが、デザイナーがデザインした良い椅子を選べば、暮らし方まで選べてしまうのです。
デザインで決まる暮らし方
今回ご紹介するのは以下の3つの椅子です。
・デンマークのFredericia FurnitureのJ39チェア
・PP MoblerのPP68チェア
・日本が誇るマルニ木工のhiroshimaチェア
この3つの椅子に焦点を絞り、座り比べてその時の姿勢をご覧いただきます。そして、椅子の背もたれの位置や座面の奥行の深さにも注目していただくととてもわかりやすいと思います。
◯J39チェア
ボーエ・モーエンセンがデザインした凛とした端正なデザインが特徴のチェアです。実際に座ってみると、不思議と姿勢が良くなるのが特徴の椅子になります。
(デザイン協力:KERUN design offis)
座面の奥行きが約39cmと短く、重心の位置から背もたれまでの距離が約20cmと近いので(重心位置はモデルが実際に座った位置。人によって変わります)、椅子に座るだけで自然と姿勢が良くなるようにデザインされています。
J39チェアを選べば、在宅ワーク等の作業をされる方や、姿勢良くご飯を食べたいといった方にとても向いていると言えます。立つ↔︎座るの動作も楽に行えますので、キチンとした暮らしを送りたい方・または忙しい方なんかにもオススメです。
J39チェアを使ったインテリアはこんな感じとなり、空間も凛とした印象になります。これは姿勢が良くなる暮らし方と空間の印象がマッチしているということだと思います。
◯PP68チェア
このPP68チェアは、座る位置を少し前にすれば後傾姿勢になり、ゆったり座ることができ、深く腰をかければ姿勢良くも座れるといった、実は良いとこ取りの万能な椅子なのです。
この椅子は、生涯500脚以上の椅子をデザインしたハンスJ.ウェグナーが晩年にデザインした別名ラストダイニングチェアとも呼ばれるものです。椅子を知り尽くしたデザイナーが座ることうを第一に考え、たどり着いた究極の椅子と言われています。
(デザイン協力:KERUN design offis)
PP68チェアを使ったコーディネートは、ゆったりした時間が流れるような印象もありながら、空間自体はコンパクトにすることもできるバランスのとれた空間になります。
ラウンド(丸)テーブルを使用しているのもありますが、日本のコンパクトなLDKにも取り入れやすいデザインではないかと思います。
◯hiroshimaチェア
この椅子は座ると自然とくつろぎの姿勢になります。その為、長時間座っていても疲れません。
(デザイン協力:KERUN design offis)
座面の奥行きが約44.5cmと深く、腰掛けるとそこから背もたれまでの距離が約30cmと離れているので、自然と後傾姿勢に誘われるデザインになっています。
ダイニングでゆっくりとした暮らしをしたいと思っている方やカフェのようなリラックスした暮らしづくりに向いている椅子です。
食卓で過ごす時間ををゆっくり楽しんだり、コーヒーやお酒を愉しむ時間を大切にされる方にオススメです。友人を呼んで、ダイニングでゆっくり語りたいという方にも最適な椅子と言えると思います。
hioroshimaを使ったインテリアは、ゆったりとした時間が流れるような優しいイメージの空間になります。
ご紹介した3脚の椅子。
これまでの内容を頭に入れて、並べて見てみるとわかりやすいかと思います。
(デザイン協力:KERUN design offis)
※これはあくまで私の感覚でわかりやすく可視化できればと思い作ったものですので、ご参考までにしていただけたらと思います。
実際に座ってみると、人によってそれぞれ感覚は違いますし、周りの家具や空間との合わせ方でも何がベストかが変わってきます。
自分に合った良い椅子は、暮らし方やインテリア全体の印象までも作ってしまいます。椅子はインテリアの中でも最も重要な家具の一つだと私は思います。
今回は3点に絞ってご紹介させていただきましたが、一般的にデザイナーズチェアと呼ばれる椅子は、大きく分けてこの3つのどれかと座り方が近いものがほとんどです。
椅子選びの際には、この3パターンのどれに該当する椅子なのか、そして自分はどんな暮らしを送りたいのかをイメージしながら選ぶ事で、より素敵な空間づくりを実現できます。またここから木の素材や色を変えたり、周りの家具とのバランスでインテリアコーディネートを楽しんでいただくことも出来るのです。
本格的な家具選びはほとんどの方が初めてだと思います。長く使い続けるものだからこそ家具選びは慎重にならざるを得ない事だと思います。
良い家具に出会い、上手な空間づくりができれば、自然と家に帰るのが楽しくなり、生活のリズムも整い、大袈裟かもしれませんが人生が豊かになる、家具にはそんな力があると私は信じています。
これからも皆様の人生が豊かになるためのヒントをたくさん詰め込んだコラムをお届けしたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
初回となる暮らしの中の家具コラムいかがでしたか? ご紹介していただいた三脚の椅子はどれも名作で、見たことがある!という読者の方も多いのではないでしょうか。
しかし実際に購入したいとなると中々情報って少ないですよね。今回は座り心地やコーディネート例・暮らしに合った選び方までとてもわかりやすくお話しいただきました。
私はその中でも、椅子が暮らしをつくるというのがとても印象深い言葉でした。
我が家は新居に入居する際に、家具は揃えませんでした。それは予定にない建て替えだったことや、住みながらちょっとずつ揃えるのも悪くないかな?と考えたからです。この家に住んで2年。いまだに我が家の椅子は揃っていません。
インスタグラムなどで素敵な家具を見るたびに早く新しい家具を揃えたいなぁと思います。見た目が好きなモノ・憧れているモノは沢山あるのですが、これだ!という椅子に出会えていないのかもしれません。
家具を選ぶ基準は人それぞれですが、どんな椅子を選ぶかは、自分のこれからの暮らし方を選ぶことに繋がる。そう思うと、あれこれ思い悩んだりする時間もなんだか愛おしく感じてきます。まだ我が家の椅子探しは続きます。もう少し色々な椅子に座ってみたいなと思っています。
買い替えをしなくても長く愛せる家具だからこそ、理想のモノに出会えるまではしばらくこの未完成な暮らしを楽しむのも悪くないかな、そんな風に思わせてくれたコラムでした。
(編集:megu)
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