【暮らしの中の家具】「経年変化と仕上げを知る」家具と向き合う暮らし〜良い家具を永く大切に使う方法(FILT.さん)
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日々の暮らしの中で欠かせないもの、大切な家具から雑貨、お花、珈琲なんて方もいるかと思います。
家具を買うときに、材質の種類やメンテナンス、塗装の特徴と言ったことや、お花屋さんに寄った際に、季節の花や活け方、日持ちするの?なんて、値段に差こそあれど、ちょっと知ってるだけで選択肢が広がることが沢山あると思ってます。
そう言った、ちょっと知ってると暮らしに広がりが出る、そんな「へ〜、なるほど〜、そうだったんだ!」と思ってもらえるようなコラムを「暮らしの中の◯◯」シリーズとしてお届けしていきます。
「暮らしの中の〇〇」シリーズはこちらからご覧いただけます。
天然木でつくられた家具を大切に永く使うこと
執筆者:FILT.さん
間取り図を使って、理想の暮らしは椅子選びからというお話をした前回のコラムに続きまして、今回は「永く使う良い家具」についてお話したいと思います。
天然木でつくられた良い家具を大切に永く使いたい、お気に入りの家具を見つけて経年変化を楽しみながら自分のものに育て上げていきたい、と憧れる方はたくさんいらっしゃると思います。
そこで「良い家具って?」「お手入れの仕方は?」について、今回と次回のコラムで2回にわたってご紹介していきたいと思います。
家具の経年変化について
まずは家具の経年変化を楽しんで使っていただきたい!という私の思いからお話いたします。
家具を初めてちゃんと買うのは、新生活を始める時がほとんどではないでしょうか。その際に雑誌やSNSでよく見る所謂「良い家具」の価格に驚いた方もいらっしゃるかと思います。
それはびっくりしますよね。
椅子でいうと量販店では数千円〜1万円代で手に入るものが、良い家具だとその10倍の値段がするのですから。
とある素敵な商品を作り続けている会社の社長さんから、とても心に刺さる言葉をいただいた経験があります。それは「モノは時間が経つと2つに分かれるんですよ。その2つとは時間が経って“劣化”していくものと“熟成”していくものです」という言葉でした。その時に、これまで色々と頭の中を巡っていたことが一つに繋がり、すっと腑に落ちたのです。もちろん、その会社は後者の熟成していくものを作り世に送り出し、人々の生活を豊かにしています。
熟成するものとは、時間が経って「味が出る」「経年変化を楽しめる」と言われるものです。
下の写真は左が数年経過したもので、右が新品の家具です。
次に、さらなる経年変化をみてみましょう。
下の写真は以前のコラムでもご紹介したJ39チェアを3つ並べています。
左から購入してから数ヶ月のもの、中央はFILT.の反端が実際に私生活で使い続けている数年経過したもの、一番右は数十年経過したものです。
入荷して数ヶ月のものと、1年〜2年ほど経過したものを横に並べると一目瞭然です。恥ずかしながら私物の真ん中の椅子は、忙しくてしばらくメンテナンスはできていません。一番右側は知人からヴィンテージの同じ椅子をお借りしました。(@sin.___ さんスペシャルサンクス!)
お手入れの仕方によりますが、同じ木の種類でもこんなにも変化していきます。これが木の経年変化です。
家具の仕上げ方法とメリットデメリット
経年変化についての理解を深め、「よし!お気に入りの家具がみつかったから、買いに行こう!」と思った時に、また新しい問題が出てきます。
それは、家具には「仕上げ方法」を何にするか選ばないといけないという究極の選択があります。
先ほどのJ39チェアでもソープ仕上げ、ラッカー仕上げ、オイル仕上げの3種類があります。種類のお話の前に、まず仕上げとは何かをご説明します。
仕上げとは
木の家具は天然の素材で、家具になってからも呼吸をし続けています。
表面には導管があり、水分を吸ったり吐いたりもします。それを家具の材料として使うのですから、木の板が反ったり縮んだり、時には割れたりします。また、導管から水分を吸うので、飲み物をこぼしたら染みていきます。
そういった変化から家具を守るため、仕上げで施される塗装工程のことを指します。現在主流は、ウレタン仕上 / ラッカー仕上 / オイル仕上 / ソープ仕上です。
結論から言うと、どれが一番良いということもありません。どれも一長一短で、使う方の生活にあったものを選ぶべきです。
では、それぞれの仕上げの特徴やメリットデメリットについてお伝えしていきます。
ラッカー仕上げ / ウレタン仕上げ
木の表面にラッカーやウレタン樹脂という薄く透明な「膜をつくる」仕上げ方法です。
◯メリット
•木の表面に塗膜ができ、汚れやシミがつきにくい
•メンテナンスはほとんど必要ない
•木の表面に膜を張り、呼吸を抑制する為、反ったり割れたりしにくくなる
◯デメリット
•表面に塗膜ができる為、木の質感が失われる
•メンテナンスができない(傷等の修復が困難)
•経年によって樹脂が剥がれる可能性がある
•メンテナンスの際はメーカーにより全て剥がす作業が必要で高額になる
オイル仕上げ
膜を作らずオイルを木の表面から「浸透させ」、木の表情を大切にする仕上げ方法です。
◯メリット
•木の質感を感じることができる
•多少の傷や汚れはメンテナンス可能(知識が必要)
•質感を自分で調整可能
◯デメリット
•膜がないので、汚れがシミになる
•木が呼吸をするので、反りや割れなどの変化が起こりうる
•メンテナンス失敗により、質感が変わったり、ムラができる可能性がある
ソープ仕上げ
読んで字の如く、石鹸の泡を浸透させる仕上げです。
◯メリット
• 木の質感をほぼそのまま感じられる
•多少の傷や汚れはメンテナンス可能(知識が必要)
•メンテナンスが簡単(失敗が少ない)
•メンテナンスを続ければ続けるほど石鹸の油分によりオイル仕上げ同様ほど汚れづらくなる
◯デメリット
•各仕上げの中で一番汚れやすい
•木が呼吸をするので、反りや割れなどの変化が起こりうる
•メンテナンスし続ける必要がある
自分に合った家具の仕上げの選び方
先述した仕上げの中からどの仕上げを選べば良いかは、生活の仕方や暮らし方によって変わってきます。個人的にはお手入れしながら自分の味に変化していってほしいので、ソープ仕上げやオイル仕上げの家具を選ぶことがほとんどです。
特にソープ仕上げの家具のお手入れは、無添加の石鹸を泡立てて家具に乗せる方法ですので、やり方は本当に簡単で、自分の洗顔ができる方ならどなたでもできます。
このように泡立てて、泡を乗せるだけなんです。汚れも取れますし、繰り返すことにより油分でコーティングもされていきます。お手入れすることがとても楽しくなりますよ。
その影響もあってか、友人やお子様に心の中で「良い家具だからあまり触らないでほしい・・・」なんて思わなくなりました。それくらいメンテナンスが簡単です。
良い家具を買っても、緊張しながら使うなんて本末転倒ですよね。ですから、お手入れできるソープ仕上げやオイル仕上げを個人的にはおすすめしたいです。また次回、お手入れの仕方をしっかり書きたいと思います。
一方で、ウレタン仕上げやラッカー仕上げは、普段忙しい方、お手入れに自信がない方におすすめです。
ソープ仕上げは特に最初のうちはすぐに汚れてしまいます。そのため、汚れがストレスになってしまう方はウレタン仕上げやラッカー仕上げが向いています。
ウレタン仕上げやラッカー仕上げのものは、多少食べ物や飲み物が溢れても固く絞った水拭きや乾拭きで取れます。ご家族の中でも、「汚さずに食事をして」と言うのは、言う方も言われる方もストレスに感じますよね。
また、木の変化「割れ」「反り」等を出来るだけ避けたい方にもおすすめです。家具は暮らしをよりよくするためにご購入いただきます。その家具がストレスの原因になってしまうのは、一番悲しいことです。
ただ、注意する点は、ウレタン仕上げやラッカー仕上げのものは「お手入れができない」ことです。
木は劣化ではなく熟成するとしても、ウレタンは十数年、数十年経つと白く濁る等の変化も考えられます。また、傷がついてもそれが表面の膜の部分の傷だと悪目立ちし、お手入れができない可能性が高いです。
そのため、お手入れ方法としては、傷がたくさん増えた十数年後にメーカーに送り返して、全て剥がし、再塗装するということになります。配送料、メンテナンス費用も検討時に確認できるといいですね。
まとめますと、ご自身やご家族の性格、生活の仕方、お手入れができるかどうか等まで考慮して、自分に合った仕上げを選ぶ必要があります。そして、自分にマッチした家具が選べた時、本当にどんどん美しく変化していく「永く使える良い家具」になると思います。
例えば家を買う時に、結婚した時に、頑張って買った家具だとしたら、、その時を振り返って、あの時に買った家具がこんなにも素敵に「味が出てきた」などと思えたり、メンテナンスをしながら次世代に受け継ぐこともできる可能性も大いにあります。とても素敵じゃないですか?
万が一、手放すことがあったとしても、ヴィンテージとなって何処かの国の誰かが引き継いでくれる、そんな価値のある家具です。
家具屋としては、そんなストーリーを思い描いて購入してほしいなと思う日々です。
永く付き合える家具屋を選ぶ
最後に、もう一つとても大切なのが、仕上げやメンテナンスについてしっかり教えてくれる家具屋を選んで購入していただくことです。
家具は購入するその時だけではなく、永く付き合うものです。お手入れも必要ですし、壊れる可能性もあります。しっかり対応してくれる、永く付き合える家具屋を選んでください。
今回で3回目のコラムですが、お話したいことの本当に一部の一部ずつしかお話しできていません。それだけ家具って奥が深いです。でも、知れば知るほどハマるはずです!と、勝手に思っています(笑)
コラムって一方通行ですので、どう思われているか実はワクワクドキドキしています。是非、お店に来ていただく機会があれば、感想をお聞かせくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回もとっても為になるお話でした。半分勉強のような内容だとも思うのですが、興味深くてスルスルと読み進んでしまう楽しさがありましたよね。
「良い家具」は高い買い物であっても劣化ではなく熟成し、お手入れ次第では受け継いでいけるものだと考えたら、ものを選ぶ基準も変わってくるのではないかと思いました。
ソープ仕上げは優しい色合いで素敵だなと思う反面、見るからに汚れやすような質感が気になっていましたが、手入れを繰り返すことで油分でコーティングされて汚れにくくなるとは知りませんでした!
それから椅子について熱く語っていらっしゃったFILT.さんがどんな椅子を愛用しているのか、前回のコラムから密かに気になっていたので、今回のコラムで繋がって「そうだったのかー!」と思いました(笑)J39、納得です。きっと他の椅子もお持ちのことと思いますので、今後のコラムで出てくるのか見守りたいと思います。
FILT.さん、ありがとうございました!
(編集:kaori)
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