日々呼吸をし、表情を変える家。旧家を引き継ぐリノベーション〜____komorebiさんのご自宅を探索(後編)
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古い日本家屋をフルリノベーションし、新しいモノと古いモノ、それぞれの良さを引き出しつつ調和した家と、komorebiさんが考える四季折々の風情を感じながらの暮らし。
後編では住まいの中心にあるLDK、自然と集まった作家さんのアイテムや、その暮らし方。そしてご本人のアカウント名にも紐づく”木漏れ日”についてご紹介していきます。
前編:質素でゆとりのある家と、日々の風情を感じながら暮らす。____komorebiさんのご自宅を探索(前編)
光が零れ、そして影ができる
komorebiさん
前編でもお話しましたが「調和」は一つのテーマであり、中でも家全体を明るく照らす日差しではなく、「明と暗が交じり合う」ように窓の位置や大きさを建築家さんが丁寧に計画してくださりました。打ち合わせの中で明るいところもあれば暗いところもあることで空間にリズムが生まれ、居心地の良さにつながるという話になり、それは我が家が望む家づくりのキーワードとなりました。
完成した家に住み始めて感じるのは、多すぎず少なすぎない窓の数、高さや大きさが絶妙ということ。隣家との視線、外の風景の切り取り、刻々と表情を変えていく光の入り方など、どの窓もすべてがちょうど良いと感じています。
窓にはカーテン代わりの麻布を垂らしていますが、風が吹く日にその布に映し出される木漏れ日の瞬きがまるで宝石のように煌く時があり心を奪われます。
家の中にいてそのような風景に出会える瞬間がこの家にはたくさんあります。
朝は窓から部屋へと刻々と光が差し込みます。自然光のありがたみを感じながらその様子を眺めるのもまた楽しみ。
夜は部屋全体が満遍なく明るいのが苦手で、必要な場所に必要なだけの明るさがあれば良いと思っています。夜はもともと暗いもの、夜が更けて眠りに着くまでの時間に心を落ち着かせて静かに過ごしたいと思うからです。
そのため我が家の照明は各部屋にモーガルソケットが1〜2つのみ、リビングダイニングはこれに蠣崎さんの照明と補助でflameのスタンドライトがあるのみです。
なるべく自然の流れに、そして建築家さんの設計を生かすような、そんな暮らしを心がけています。
家は呼吸し、家族はくつろぐ空間
居心地のよい広間
家の中ではリビング・ダイニングがひと続きになった広間が一番好きです。一日の中で一番多くの時間を家族とともに過ごすのが広間だと思います。建築家さんが居心地の良い空間を丁寧に設計してくださりました。
ダイニングテーブルを円卓にしたことで家族のお互いの距離感が近くなり、家族団欒を感じられて好きです。
建築家さんの紹介で、hao&meiの傍島浩美さんに製作していただきました。
ダイニングチェアのJ39に合わせて、ナラ材、幕板なし、装飾のない円柱型のストンと落ちた足、敢えて面取りをしない角が立った部分など極限に無駄を削ぎ落としたシンプルさが素敵だなと思います。またモーエンセンのJ39は、質素で潔いシェーカー家具の佇まいが気に入っています。
ダイニングのペンダント照明は当初建築家さんから著名な北欧デザインのモノを勧められましたが、悩んでいるうちにあいにく生産終了となってしまいました。簡素な我が家に北欧デザインの照明は悪目立ちするかもしれないと思い2年間悩み続けていたところにガラス作家の蠣崎マコトさんの照明に出会いました。
声高に主張しすぎることなく、ガラスの凛とした佇まいは空間を静寂とともに引き締めてくれるように感じます。
2年間照明がなかった頃と比べると照明ひとつでかなり印象が変わったと感じています。蝋燭の灯のような優しい灯りは心が洗われるようです。食卓が明るくなって、食事も美味しくなりました。
TVボードは無印良品のREAL FURNITUREオーダー商品のモノです(現在は廃盤)。重心が低く極シンプルな幅広のデザインは飽きずに永く使えそうです。
普段はスライド式の扉にAV機器を隠し、もう片方が飾り棚のように使えるデザインが気に入っています。
無垢の家具は肌触りが良く、経年変化で木の色味に深みが増し、大切にすれば孫の代まで受け継いでいけるそうです。生活していく中で滲みや傷も増えていきますが、それが味わいとなり育っていくのだと思います。
暮らしに合う家具を求めて
家具は時代に左右されない、スタンダードでシンプルなデザインのモノを選びたいと思っています。それはすなわち私たちの暮らしと通じるところで、前編でもお話しましたが多様な用途のあるモノを取り入れるようにしています。
例えばこのムライスツール。ひとから譲り受けた古い天童木工のスツールですが、スツールとしてはもちろん、こどものちょっとした机になったり、花台になったり、時にはブックスタンドにもなったりと使い方も様々です。
また我が家にソファがない話は前編でお話しましたが、暮らし始めた当初に仮のつもりでsnowpeakのtakeチェアを置いていました。
実際使っていくと軽くて移動が楽、こどもたちが食べ散らかして良く汚すがコットンキャンバスの張地はすぐに外せて洗えるなど、思わぬ利点がたくさんあり、結局今も置いたままです。ソファはもう少しこどもたちが大きくなって汚さなくなってからでも良いのかなと思い始めています。
自然素材を使い、新旧の融合を目指す
床は建築家さんの勧めで唐松の無垢材を使用しています。無垢材特有の優しい肌触りがとても心地よく、家では裸足で過ごすことが多いです。
壁はドイツ漆喰と呼ばれるフェザーフィールを友人たちにも手伝ってもらい自主施工しました。ローラーを使って塗装するので施工は比較的簡単ですが、家中の壁を塗るのには苦労しました。その甲斐あって、漆喰の調湿性能が家全体の空気を洗ってくれるようで清々しく感じています。
広間の掃き出しの大窓は木建具で製作していただきました。引き込み戸となっているので窓を開けると框が完全になくなり、外との一体感を感じられるような開放感を味わえます。改修前は縁の下があり床が高く、庭へ出るのにやや苦労していましたが、改修で床の位置を地上高近くまで下げたので庭がより近くに感じられます。
天井は取り払い吹き抜けにして梁現しに。床レベルを下げたこととも相まって一番高いところで天井高4mほどあります。そのおかげで数値的には決して広くないリビングダイニングですが、空間が伸びやかに感じます。
祖父母が使っていた家具や一部の建具などは流用していただきました。全ての要望は叶いませんでしたが、思い入れのあるものを改修後も一部残せたのは嬉しく思っています。
元々の古い家屋と改修した部分がちぐはぐにならないように、なるべく新建材は使わずに自然素材を使っていただきました。古さの残る家を全く新しい家に作り替えようとすると無理が生じ、かといって逆に古さを演出するようなデザインに寄せてしまうと付け焼き刃になってしまうと思います。
古いものと新しいものが違和感なく馴染むように整えるのは、さすがプロの建築家さんだなと敬服しました。将来永い年月をかけて古い部分と新しい部分がより馴染んでいってくれれば良いなと思います。
構造・躯体を生かし、引き継ぐこと
当初対面キッチンを希望していましたが構造上叶いませんでした。しかし小さな台所はさながらコックピットといった風貌で、手を伸ばせば道具に届き、家事にも集中できるので逆によかったのかもしれません。
また壁に面したことで、小さな窓からは日差しが入り手元も明るいです。実は改修前にも台所には大きな窓があり、そこから眺める外の様子がとても好きでした。方角は変われど、以前の雰囲気を踏襲したこの窓は一つのお気に入りスポットです。
使い勝手がよくなった台所と、お気に入りの道具のおかげで様々な料理に挑戦するやる気が出て楽しくなりました。
雰囲気を残した浴室
改修前の浴室は洗濯場所も兼ねたような無駄に広い空間で、窓も大きなものがついていて冬場は非常に寒く、湯船のお湯もすぐに冷めてストレスでした。改修を決めた大きな要因のひとつがこの浴室でした。
我が家は家族皆入浴にこだわりがなく、洗ってすぐに出るだけなので必要最小限の寒くない小さな浴室に新しく作り替えてもらいました。
特別なモノはない小さな浴室ですが、そのおかげで寒くなく、お湯がすぐに沸き温かく入浴できることに喜びを感じています。
加えてユニットバスにしてしまうと古さの残る我が家の中で浴室だけ雰囲気が浮いてしまうと思い、コストはかかってしまいましたが在来工法で施工したのも小さなコダワリです。
躯体を残したことで生まれたロフト
我が家は平屋ですが、天井を吹き抜けにし床レベルを下げたことでロフトや6畳ほどの屋根裏収納を設けることができました。
小さな家で居心地よく暮らすには、ある程度まとまった収納場所を設けると良いと思います。モノがあちこちに散らばらず、居住空間の動線を妨げるのものがなくなり居心地の良さに繋がります。
手放しながら、新しいモノを迎える
先述してきましたとおり、モノが増えすぎると暮らしにゆとりがなくなっていくような気がして、本当に必要だと感じるモノ、また新しいモノを手に入れるなら何かを手放す意思を持って暮らしています。その中で大切にしている作家さんの作品についていくつかご紹介させてください。
四季折々を感じられるように、花や緑は絶えず供えたいと思っています。そんなこともあって花器は気に入ったものがあると連れて帰りたくなります。
特に和田麻美子さんの花器は佇まいが繊細で愛らしい形状がそれだけで絵になるので気に入っています。
それから家づくりの計画を始めた頃、新しい家に設えるものとして最初に手に入れたモノがchikuniさんの時計でした。この時計が我が家の指標的な存在に感じていて、とても愛着があります。この先もずっと我が家のことを見守りながら時を刻んでいて欲しいと思っています。
chikuniさんの創り出す修道院的な佇まいの作品たちはもちろんですが、選ばれた古いモノたちにも惹かれます。ギャラリーに伺うたびに心が弾み、とても良い刺激を貰えます。
昨年骨董市が開かれた際にcuikuniさん出品のデミジョンボトル、naimaさん出品の養蚕道具をタペストリー代わりに、mabsauさん出品のスッカラなどを買い求めました。
実際にお会いしてそのモノに纏わる興味深いお話を伺いながら過ごす時間はとても楽しいです。最近は外出自粛要請があってどのお店も大変な思いをされていると思いますが、Instagramを見ていると皆さん様々なアイデアで乗り切ろうと努力されていて勇気づけられます。
白日さんが動画で寅さんの叩き売りスタイルで通信販売をされていたのがとても面白くて毎晩子どもと楽しみに見ていました。白日さんのポスターが精細なテクスチャで美しく、買い求めました。今どのように飾ろうか模索中です。
食器などは旅先や青空市などで買い求めることもあります。それらの食器は、家で使うたびにその時感じた思い出を蘇らせてくれます。
安曇野へ旅行に行った際、nagiへ伺って阿久津真希さんの花器や器を連れて帰りました。それらを使うたびに安曇野の緑豊かな山脈やその地の長閑に流れる時間の中で暮らす方たちの風景が目の前に蘇ります。
時の経過とともに変化していく我が家
自分たちの身の丈にあった、必要最低限の簡素な家で、四季折々の風情を日々感じながら慎ましく暮らしたい。完成した時に完全な状態でそこから劣化していくのではなく、時が経過して味わい深く馴染んでいき、家族の成長と一緒に家も育っていく、そんな家での暮らしを望んでいました。
リノベーションとは一見「旧から新へ」と様変わりするように聞こえますが、我が家は違います。ご紹介してきましたように、旧家の良いところを引き継ぎ、新しい部分も馴染むような、そんな設計です。
暮らしの中で変化・成長していくこの家に完成はないのかもしれません。まだまだ理想にはほど遠いですが、建築家さんと一緒につくりあげた今の家には満足していますし、思い描いていた暮らしにも一歩近づいたと思っています。
これからも四季折々の風情を感じながら、暮らしを楽しみたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(おわり)
写真を見て惹かれ、お話を伺うとkomorebiさんの価値観に引き込まれました。
私は割とモノを持つタイプで言ってしまえばkomorebiさんとは対極(とまではいきませんが)にいるかもしれません。そんな自分にはない考え方や暮らしのほんの一面ですが触れられるのは、ムクリを運営している幸せの一つだなと感じるほどでした。
最新の家電だっていいですし、古き良き古道具だっていいんですよね。そこにしっかり意思があれば、幸せを感じることでしょう。
komorebi(木漏れ日)の由来は、写真を見た時から感じていました。木漏れ日のように、自然が与えてくれるモノって日々変化して全く同じではないのが最大の魅力だったりします。
さてお届けしてきましたkomorebiさんの家づくりと暮らし。前編がまだの方はぜひ併せてご覧いただけると嬉しいです。
前編:質素でゆとりのある家と、日々の風情を感じながら暮らす。____komorebiさんのご自宅を探索(前編)
komorebiさん、ありがとうございました!
(編集:編集長)
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