「引き継ぐ」を通じて持続的な暮らしを実現する〜北欧に学んだhalutaが伝えたいこと(前編)
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緩やかな時間の流れ。
シンプルで飽きがこない家具と、暖炉を囲んだ暖かい家庭。デンマークの暮らしと聞けば「HYGGE(ヒュッゲ)」に代表される穏やかで幸福度の高い暮らしが浮かんできます。
健康はもとより、環境に配慮したオーガニック中心の食生活に、高性能で耐久性の高い住まいづくり、そしてヴィンテージ家具をはじめとした後世に引き継がれていく暮らし。
そんな持続的な暮らしを日本に伝えようと、長野の上田から発信を続けるhaluta。
長野県上田市、東京・神田、デンマーク・コペンハーゲンに拠点を持つhalutaが伝える「引き継ぐ」こと。編集部が家具、食、住まいの3つの観点からお話を伺ってきました。
北欧のかおり漂う家具がお出迎え
デンマークをはじめ、北欧諸国から買い付けた家具がところ狭しと並ぶhalutaの倉庫。
何十年という歴史を重ねた家具たちが、買い付けてきた状態のものと、丁寧に修復されたものが同じ空間に並び、新しい出会いを待ち望むように並ぶ姿が印象的です。
冬の寒さが厳しい2月は家具倉庫の一般開放は行わず、アポイントメント制にしているところを、特別に取材させていただきました。
ーーご案内いただいたのはhalutaで家具をメインに担当する、比留川さん。取材の申し込みにも丁寧にご協力いただきました。本日は、よろしくお願いします。
まずは簡単に倉庫のご案内をお願いできますか。
比留川さん:
よろしくお願いします。
halutaで買い付けてきた家具は全てこの倉庫に格納されます。
手前はリペアが完了して販売中の家具、奥に積み上がっている家具はリペア前のものになります。
ーー家具の多くがデンマークからの買い付けですか?
比留川さん:
そうですね。
代表の徳武が、2000年頃、北欧のヴィンテージ家具に出会って感銘を受けたのがきっかけです。
現在、代表の徳武は家族でデンマークに居住しており、halutaもデンマークを拠点のひとつとしています。
なぜデンマーク?というと、勿論家具の買付もありますが、デンマークが持つ文化的で健康的な暮らしに感化されたことが大きいです。
ーーその文化的な側面がhalutaの大切にする「引き継ぐ」に繋がるのでしょうか?
比留川さん:
はい。
永らくインテリア業を柱に活動してきたこともあり、halutaに対してヴィンテージ家具の店という印象を持たれている方も多いかと思います。それゆえ、遠方よりわざわざ上田までお越しいただく方も沢山いらっしゃいます。
でもヴィンテージ家具はhalutaの事業の一部なんです。
デンマークをはじめ、北欧の国々では家具だけではなく、住まいや食器・雑貨など世代を超えて引き継ぐ慣習があります。
使い捨てではなく、持続的な暮らしに惚れ込み、日本もそうあるべきだなと考え、家具のみならず住まいや食を軸に「引き継ぐ」暮らしを伝えていくことを心がけて活動しています。
ーー北欧家具は永く愛されるデザインが特徴ですが、どのような背景や文化が起因しているのですか?
比留川さん:
様々な時代背景や要因がありますが、一つは国土が大きく影響しています。
ーー国土ですか?
比留川さん:
デンマークの広さは九州とほぼ同じくらいです。そのため、家具の材料である木材をはじめとした資源に限りがあります。
当時、教育者でありデンマークデザインの父とも言われるコーア・クリントというデザイナーがおり、彼は資源が少ない国がどう伸びていくかを考えた時に、「知的財産」を残すことを目指したそうです。
教育からデザイン思考を取り入れたことで、必然的にデンマークには優れたデザインを生み、そして残していくという文化が根付いていきました。それが現在まで続く優れた北欧プロダクトの基礎になっていると言われています。
(出典:http://haluta.jp/bread/rugbrod)
ーー国に資源がないがゆえ、国として教育からクリエイティビティを大切にしていったことが、デンマークデザインの発展に繋がったと。
比留川さん:
ご覧の通り、ヴィンテージ家具はチークをはじめ南洋材が多く用いられていますが、それらは北欧では育たない木材です。
当時、海運業が盛んなデンマークは東南アジアなどから良質な木材を多く輸入し、デザイン力や技術力を生かして家具にすることで国の発展を支えました。
50~60年前は森林伐採の制限なども厳しくありませんでした。良質な木材を輸入でき、加えて教育から培われたクリエイティブなデザインが合わさることで、ヴィンテージ家具の黄金期が生まれました。
ーー運命ですね。
ここに並んでいる家具も一般のご家庭にあったものということですよね?
比留川さん:
最近はヴィンテージ家具を収集しているディーラーに行って買い付けることがほとんどですが、昔は一般のご家庭にある家具を買い付けるなんてこともありました。もちろん、ディーラーにある家具もその殆どは家庭で使われてきたものです。
日本国内だけでもかなりのヴィンテージ家具が流通していますが、日本に限らず世界中に輸出され続けていることを考えると、当時どれだけの数が生産されたのか計り知れません。
ーーそれだけの数が状態良く残っているということも、一つの文化であり「引き継ぐ」姿勢なんでしょうね。
比留川さん:
ヴィンテージ家具は、同じモデルでも使われてきた環境や表情、状態が異なり、結果的に一点ものとなります。
いずれ枯渇する時が来るのか今は分かりませんが、遠く北欧の地で大切に使われてきた家具を、また息を吹き返すよう丁寧に修復して、みなさまのお手元に届けられるよう心がけています。
ーーミナ・ペルホネンのファブリックはもう一段明るさを与えてくれますね(可愛い!!)
比留川さん:
北欧家具は華美な装飾がないため、セレクトするファブリックによって印象が大きく変わります。
ゆくゆく張替を行うことも出来ますし、張替が必要となった際には異なるファブリックを選ぶことで、同じ家具でも大きくイメージを変えることができます。多くのラインナップの中でも、ミナ・ペルホネンのファブリックは女性からの引き合いが多いです。
ーー普段この倉庫で家具のリペアをを行っているのですか?
比留川さん:
倉庫の奥にリペアブースがあります。
halutaでご購入された家具以外でも、北欧ヴィンテージ家具でしたらお問い合わせをいただければご相談内容次第ではリペアを行っております。
生地の張替えだけでもご覧になられますか?
ーーおお!ぜひお願いします!!
比留川さん:
こちらがリペア前の椅子です。
座面の生地の張替えをご案内しますね。
まずは、ウレタンの型取りをして切り取ります。この際に少しだけ大きめに切り取るのは北欧式です(ウレタンを少し巻き込むようなつくりになっているのを再現しています)
あとは生地を合わせ貼り合わせていきます。
シンプルな流れですが、木材部分の修繕も行いますし、それなりに時間がかかります。これらは全て手作業で行っています。
ーーありがとうございました。
倉庫には食器や雑貨(勿論どれもヴィンテージ)も置いてあり、テンション高めの編集部。
北欧雑貨やインテリアのアイテムがクリエイティブで心をギュッと掴むものが多いのは、デザイナーのセンスだけでなく、教育として培われてきた文化でもあったんですね。
椅子から始める北欧インテリア
倉庫の一角にはヴィンテージ家具をディスプレイしたショールームがあり、実際の暮らしをイメージすることができます。
ーー陽当たりもよく、倉庫で感じた印象とはまた違った家具の顔が見ることができます。
比留川さん:
床材をオーク、壁は白でモダンなテイストにしています。シンプルな空間にヴィンテージ家具をスタイリングした雰囲気をイメージしていただけるよう、リビングやダイニングをはじめ、暮らしのシーンを思い描けるような空間にしています。
ーー長く愛用できるヴィンテージ家具を少しずつ揃えていきたい、という時には、どの家具から始めてみるのが良いですか?
比留川さん:
そうですね、ヴィンテージとは言え現役で使えるものばかりですので、どのような用途で家具を探すかにもよりますが、初めてのヴィンテージ家具としてお勧めする事が多いのが「椅子」です。
椅子は色々な場所に移動できますし、インテリア全体に占める面積も小さいです。ダイニングでもリビングチェアでもいいですね。デザインや種類も豊富で、座り心地も全て異なります。お気に入りの一脚をじっくり選ぶのも楽しいですよ。
とは言え、椅子を選ぶ上では注意点があります。
ーーどういったことでしょうか?
比留川さん:
それは椅子の大きさです。
特にダイニングチェアですね。
例えば、Yチェア。
ハンスJ.ウェグナーの代表作で、60年以上愛され続ける北欧家具です。以前より引き合いも多く、ヴィンテージの価格も上がり続けています。
座り心地も良いですし、有機的なシルエットも魅力の一つです。(写真はhalutaで取り扱いのあるCH24 Yチェア オーク:編集時点)
しかし、落とし穴があり、それが先ほどお伝えした「大きさ」です。
ーーテーブルの下に椅子が入らないのですね。
比留川さん:
ダイニングに十分な広さがある場合は別ですが、テーブルの下に入らない分だけ場所を取るので家族が行き来する動線にも影響しますし、見た目もボリュームが出てしまいます。
ーー先日ムクリのコラムでもご紹介しましたが、座るためには椅子を引くと、より広い空間が必要になりますよね。なかなか、そこまでイメージ(理解)して購入は難しいです。
比留川さん:
一点ものや在庫の少ないものがほとんどですので、迷っているうちに日常でどう使われるか?ということを忘れてしまいがちです。
そうは言っても、一目惚れ!なんていうのがヴィンテージ家具の楽しさでもあると思いますので、お伝えしたようなポイントをあらかじめ知った上で選択できるといいですよね。
ーー洗練された北欧家具を見ているとどれも素敵で欲しくなります(笑)
やはり実際お越しいただいて購入されるケースが多いですか?安くはないですし。。。
比留川さん:
都内をはじめ、中には関西など遠方からお越しになる方もいらっしゃいますが、ご購入の大半はWEB経由です。
ヴィンテージ家具が好きで、一点ものがゆえWEBで見て判断し、購入されるケースも多いのではと想定しています。
ーーそれはまた凄い。実物見ないとちょっと怖いです(笑)
比留川さん:
ヴィンテージ家具は引き継がれながら「今」があります。
大切に引き継がれている家具だからこそ価値が下がりづらいというのも特徴で、購入した数年後に購入価格以上の価値が付くケースもあります。
少しずつ買い揃えていかれる方もいますが、ライフステージに合わせて買い換えていくこともできるので、そういった経験をされた方は積極的に購入できますよね。
ーーそんな価値ある家具が倉庫には並んでいるんですね。夢のような空間です。
比留川さん、ありがとうございました!
さて、家具倉庫の隣には同じ形の倉庫をレストレーションした、halutaのオフィス兼パン工房があります。住環境に適するほどの断熱仕様になっているため、中はポカポカです。
(出典:http://www.haluta.jp/architecture/archive/)
そしてパンのいい香りが・・・
実はオフィスの中にパン工房があり、ちょうど焼きたてのパンが並んでいました。
※パンの店頭販売は毎週土曜のみ。キナリノモールでも販売しています。
(出典:http://haluta.jp/bread/rugbrod)
デンマークの国民食であるルブロ、通称「黒パン」。食物繊維やミネラルがたっぷりで独特の風味があり、何より体内環境を整えてくれる健康的なパンです。
ここにも文化的で健康的な暮らしを提案するhalutaの想いやこだわりが隠されていました。
・・・
と、前編はここまでとなります。
後編では健康的な暮らしを中心に、halutaが提供する「食」と、建築設計の「住」をご紹介していきます。
取材当日は2月とは思えないほどポカポカ日和。
普段はこの時期であれば雪が降ることもある上田市。東京から新幹線に乗り1時間30分ほどで来ることができます。また、上田から軽井沢までは車で1時間もかからない場所です。
取材前に上田駅に集合した編集部(編集長とmeguさん)。取材までの時間をhalutaさんのパンが食べられるカフェ「NABO」さんへ。NOBOはデンマーク語で隣人という意味があり、本を片手にのんびり息ができる場所でありたい、という想いから名付けられたそうです。
雰囲気もよく編集部の話をしながら・・・残念ながらパンはお昼からとのことで食べることはできませんでしたが(笑)
とても充実した取材でした。
後編はhalutaさんが建てた住まいの体験談も交えた内容になっています!
お知らせ
halutaでは2019年4月末までの期間限定で、家具のファブリック グレードアップキャンペーン開催中!詳しくはこちらをご覧ください。
GWの営業スケジュールについて
◯家具倉庫
4/27(土)28(日)29(月)、5/2(木)3(金)4(土)5(日)
12:00〜18:00
◯パンの販売
4/27(土)29(月)、5/3(金)4(土)5(日)
11:30〜売り切れ次第終了
GW中の営業日詳細はこちらをご覧ください。
家具で悩まれている方や、実際に見て決めたい!という方、ぜひ連休中に足を運んでみてはいかがでしょうか。
店舗情報
- haluta
- 住所:長野県上田市小泉821-1
- お問い合わせ:0268-71-3005 / mail@haluta.jp
- halutaWEBサイト
- Instagramのアカウントはこちら
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